3次元バフェット解析に関する研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)
報告書番号: R16J0111
- 責任者: 松尾 裕一(航空技術部門 数値解析技術研究ユニット)
- 問い合わせ先: 小島 良実(y-kojima@st.go.tuat.ac.jp)
- メンバ: 小島良実
- 利用分類: 航空分野(航空機)
概要
遷音速バフェットとは,音速に近い速度で飛行する航空機において,翼の上面に発生する衝撃波がある条件で激しく振動する現象である.本事業では,実際の航空機の形状に近いNASA Common Research Model(CRM)を用いてコンピュータシミュレーションを行った.その結果,CRMにおいては衝撃波が広帯域かつ3次元的に振動することが明らかになった.これは,狭帯域で翼幅方向に一様な2次元翼のバフェットと比較して顕著な特徴である.
目的
遷音速域における航空機の飛行性能の向上のために,航空機の安全性に大きな影響を及ぼす衝撃波振動現象(遷音速バフェット)について,NASA Common Research Model(CRM)を用いて数値解析し,3次元バフェットのメカニズムを明らかにすることを目的とする.
目標
複雑な非定常現象である遷音速バフェットの解析技術を確立する.また,将来の航空機開発に活用するために,NASA-CRMにおける遷音速バフェットの挙動を調べ,圧力波の伝播過程を明らかにする.
参照URL
なし
スパコンの用途
数値解析の実行および非定常データの分析.
スパコンの必要性
高レイノルズ数・マッハ数における非定常流れの数値解析には多くの計算資源が必要なため,スパコンの利用が不可欠である.また,解析結果のデータサイズが極めて巨大なため,その分析のために大容量のメモリを要する.
今年度の成果
遷音速バフェットは,圧力じょう乱のフィードバックにより維持される.まず,衝撃波誘起的に発生する境界層剥離により発生する圧力じょう乱が下流に伝播する.そして,翼後縁で発生する圧力波(クッタ波)が上流に伝播することによりフィードバック機構が形成される.Fig.1は,遷音速バフェットにおける乱流渦構造を可視化した画像である.Fig.1を見ると,翼幅方向位置によって,渦構造が大きく異なることが分かる.また,Fig.2に翼後縁において発生するクッタ波を可視化した画像を示す.Fig.2を見ると,翼幅方向位置によって,クッタ波の構造が異なっている.これらの事実は,フィードバック機構の様相が翼幅方向位置によって異なるということを示している.このことにより,複雑なバフェットが発生していると考えられる.
成果の公表
口頭発表
1) 小島良実, 橋本敦, 石田崇, 青山剛史, 亀田正治, ‘遷音速バフェットにおける後退角効果’ , 日本航空宇宙学会 第47回定時社員総会および年会講演会, 東京大学山上会館, 4月, 2016.
その他
2) 小島良実, 橋本敦, 青山剛史, 亀田正治, ‘三次元翼における遷音速バフェット特性のスパン方向変化’ , 日本航空宇宙学会論文集, 日本航空宇宙学会, (投稿中).
計算情報
- 並列化手法: プロセス並列
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 非該当
- プロセス並列数: 768
- プロセスあたりのスレッド数: 1
- 使用ノード数: 24
- 1ケースあたりの経過時間(時間): 96
- 実行ケース数: 5
利用量
総仮想利用経費(円): 3,617,447
内訳
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
SORA-MA | 2,011,056.13 | 3,217,465 |
SORA-PP | 13,489.58 | 115,174 |
SORA-LM | 13.10 | 294 |
SORA-TPP | 0.00 | 0 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
/home | 95.37 | 899 |
/data | 9,765.63 | 92,119 |
/ltmp | 1,953.13 | 18,423 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
J-SPACE | 56.06 | 173,070 |
注記: 仮想利用経費=2016年度設備貸付費用の単価を用いて算出した場合の経費
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)