海洋衛星データ同化システムの構築検討
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)
報告書番号: R16J0098
- 責任者: 中島 映至(宇宙科学研究所(本務),第一宇宙技術部門地球観測研究センター)
- 問い合わせ先: 可知 美佐子(kachi.misako@jaxa.jp)
- メンバ: 可知美佐子,日原勉,相木秀則,宮澤泰正
- 利用分類: 宇宙分野(衛星利用)
概要
JAXAや関係するさまざまな地球観測衛星による観測データを用いて,気候変動監視や予測に必要な海洋や海氷に関する物理量(海面水温,海上風速,海氷密接度等)の長期的なデータセットを公開すると共に,衛星・地上観測・モデルの連携により,海中を含めた複合的な海洋環境データセットを作成する.これらのデータセットは,気候研究だけでなく,各県水産試験場における海況監視などの現業利用にも貢献することを目標とする.
目的
地球観測衛星による海洋・海氷データセットや,衛星データをモデルに同化した連続的な海洋環境データセットが,気候変動研究や現業分野で利用されることで,JAXA地球観測衛星データの必要性や利用が拡大することを目指す.
目標
さまざまな地球観測衛星による海洋・海氷の長期データセットの作成と公開によって,気候研究に貢献すると共に,衛星・現場観測・海洋モデルの連携により,衛星だけでは作成できない,連続的な海洋環境データセットおよび予報を作成し,漁業などでの現業利用に貢献することを目指す.
参照URL
「海洋環境監視 | 課題分野研究 | JAXA 第一宇宙技術部門 地球観測研究センター(EORC)」参照。
スパコンの用途
JAMSTECと共同開発した,3km解像度の日本南岸域海洋モデルをベースとした,衛星データ同化システムを,JSS2上に移植・構築し,JSS2でのシステムの運用および他領域への拡張を検討する.
スパコンの必要性
非常に高解像度(3km)な日本南岸域の海洋モデルに衛星データを1日毎に同化し,約80日先までの海中の三次元物理量を予報するため,EORCで通常利用しているLinux計算機では実行ができないため,スパコンが必要である.
今年度の成果
JAMSTECと共同開発した,3km解像度の日本南岸域海洋モデルをベースとした,衛星データ同化システムを,JSS2上に移植し,JSS2で運用可能なシステムを構築した上で,動作試験を行った.Fig.1は,JSS2に移植したシステムにおいて,2017年2月11日のデータ同化による解析値で作成した海面水温(カラー),海面高度(コンター),流向流速(ベクトル)の空間分布である.流向流速のベクトルは,0.5m/s以上だけを表示している.移植のソースコードや解析に用いたデータはJAMSTEC地球シミュレータで計算したものと同じで,同様の値が得られることを確認した.また,ノード数やコア数に強く依存するが,衛星データ同化とモデル計算に要する計算時間は,1ステップあたり地球シミュレータが20分(同化)と30分(モデル),JSS2が7(同化)と4分(モデル)であり,JSS2を用いることで,地球シミュレータに比べて計算処理が格段に早くなることを確認した.また,将来のJSS2上での運用や,他の海域に適用するために必要な改良や入出力データについても検討した.
成果の公表
なし
計算情報
- 並列化手法: ハイブリッド並列
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 自動並列
- プロセス並列数: 20,32
- プロセスあたりのスレッド数: 32,8
- 使用ノード数: 8,20
- 1ケースあたりの経過時間(時間): 0.0667, 0.1167
- 実行ケース数: 15
利用量
総仮想利用経費(円): 17,927
内訳
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
SORA-MA | 4,248.56 | 6,980 |
SORA-PP | 0.00 | 0 |
SORA-LM | 0.00 | 0 |
SORA-TPP | 0.00 | 0 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
/home | 33.38 | 50 |
/data | 333.79 | 507 |
/ltmp | 6,835.94 | 10,389 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0 |
注記: 仮想利用経費=2016年度設備貸付費用の単価を用いて算出した場合の経費
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)