音響解析技術
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)
報告書番号: R16J0082
- 責任者: 嶋 英志(研究開発部門 第三研究ユニット)
- 問い合わせ先: 堤 誠司(tsutsumi.seiji@jaxa.jp)
- メンバ: 高木亮治, 堤誠司, 伊藤浩之, 清水太郎, 青野淳也, 芳賀臣紀, 森井雄飛, 安部賢治, 筧雅行, 本江幹朗, 菱田学, 小泉拓, 川島康弘, 伊藤俊
- 利用分類: 宇宙分野(ロケット, 宇宙輸送)
概要
次期基幹ロケット(H3)開発に向け, リフトオフ時プルーム音響, 及び遷音速バフェットに起因する衛星の音響環境レベルの予測と低減化が求められている. そこで, 第2期までに構築したリフトオフ時音響解析ツールの改良および適用範囲の拡大を行い, ロケット・宇宙機の飛行全般に渡る音響環境を予測し,低騒音射点, 静粛機体設計に貢献する.
目的
ロケット飛行時に排気ジェットから発生する空力騒音, 及び遷音速フライト時の衝撃波/乱流境界層干渉に起因した流体騒音の発生機構を解析し, 音響レベルの予測技術を獲得する.
目標
31.5-500Hzのロケット打上げ時の音響環境を約1週間で予測する技術を構築する.
参照URL
http://stage.tksc.jaxa.jp/jedi/index.html 参照。
スパコンの用途
数十億点規模のLES解析, 及びそのポスト処理を実施する.
スパコンの必要性
数十億点規模のLES解析を実施する必要があり, 目標とする周波数解像度を達成するためにはスパコン規模の計算リソースが必須である.
今年度の成果
成果1
JAXA角田宇宙センターにて実施したガス酸素/ガス水素試験では, 簡易フェアリング模型を設置し, 内外の音響レベルを計測した. その結果を利用し, 当センターにて開発中のCFD/CAA/振動騒音解析手法の検証を実施した. CFDは熱的完全ガスの多成分解析が可能なHigh-Fidelity LESを利用して音源となるジェット流体場を解析(Fig.1)し, 時間領域のEuler方程式を用いたCAA解析(Fig.2)を行った. フェアリング模型に関してはNASTRANを利用した構造振動と内部音響の時間領域/周波数領域の解析を実施した. そして, CFD/CAAの結果を振動騒音の結果と連成させた. フェアリング内部空間の共鳴モードやリングモードに代表される構造モードに起因したスペクトルのピークをとらえることができるようになった.
成果2
現在開発中のH3ロケットでは, メインエンジン及び固体モーターの基数が異なる形態での運用が想定されている. CFDを用いて, 異なる形態の打ち上げ時音響環境を効率的に予測するため, ロケットと発射台の計算格子を独立に作成し, 組み合わせることが可能な重合格子法を利用した(Fig.3). 計算手法には非構造格子に拡張可能であり, 重合部分のステンシルを必要としない高次精度Flux-reconstruction法を用いた. コールドジェット試験が実施された3基クラスタジェットと発射台の干渉流れに対し, 開発した手法を用いてLES解析を行った(Fig.4). CFDによりロケット近傍音圧の周波数特性を再現する結果が得られた. 今後, 異なる形態間の音響環境の差異に関する現象解明および音響低減化に向けた活用が期待できる.
成果の公表
査読付論文
1) S.Tsutsumi, K.Terashima, ‘Validation and Verification of Numerical Prediction Method for Lift-off Acoustics of Launch Vehicles,’ Aerospace Technology Japan, to be published
口頭発表
1) Seiji Tsutsumi, Shinichi Maruyama, Wataru Sarae, Keita Terashima, Tetsuo Hiraiwa, and Tatsuya Ishii, ‘Development of aero-vibro acoustics methods for predicting acoustic environment inside payload fairing at lift-off,’ J. Acoust. Soc. Am. 140, 3096 (2016).
2) 芳賀,堤,更江,寺島,石井,平岩, ‘高次精度非構造格子法を用いたクラスタ化超音速ジェットの空力音響LES,’ 第48回流体力学講演会/第34回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム予稿集2C07 (2016).
3) 芳賀, ‘流束再構築法による高次精度非構造オーバーセット格子法の構築,’ 日本航空宇宙学会北部支部創立30周年記念2017年講演会, JSASS-2017-H002 (2017).
計算情報
- 並列化手法: ハイブリッド並列
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 256, 480, 800, 1600
- プロセスあたりのスレッド数: 2, 8
- 使用ノード数: 30, 64, 200, 400
- 1ケースあたりの経過時間(時間): 170, 400, 650
- 実行ケース数: 2, 4
利用量
総仮想利用経費(円): 37,963,254
内訳
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
SORA-MA | 22,093,386.59 | 35,891,936 |
SORA-PP | 97,565.56 | 833,014 |
SORA-LM | 24,067.76 | 541,524 |
SORA-TPP | 0.00 | 0 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
/home | 8,720.97 | 82,265 |
/data | 38,040.56 | 358,837 |
/ltmp | 7,481.69 | 70,575 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
J-SPACE | 59.95 | 185,100 |
注記: 仮想利用経費=2016年度設備貸付費用の単価を用いて算出した場合の経費
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)