高レイノルズ数乱流噴流における微細スケールスカラー混合過程の解明
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)
報告書番号: R16J0065
- 責任者: 松尾 裕一(航空技術部門 数値解析技術研究ユニット)
- 問い合わせ先: 松山 新吾(smatsu@chofu.jaxa.jp)
- メンバ: 松山新吾
- 利用分類: 基礎分野(CFD,その他)
概要
本研究では,燃料と空気が混合する過程において非常に小さなサイズの乱流が果たす役割を明らかにするため,スーパーコンピュータを利用した大規模な直接乱流シミュレーションを実施する.乱流の乱れの度合いを支配するパラメータであるレイノルズ数を変化させてシミュレーションを実施し,得られた詳細データを分析することで微細な乱流の役割を明らかにすることを目指す.
目的
本研究では,DNS および高解像度の陰的 LES によりスカラー混合を伴う乱流噴流の解析を行い,とりわけ,高レイノルズ数条件において,微細スケールの乱流スカラー混合がマクロな混合過程に果たす役割を明らかにする.本研究の成果により微細スケールで起こる乱流スカラー混合過程の理解が進むことで,高レイノルズ数乱流におけるスカラー混合の SGS モデリングの改善に寄与することを目的とする.
目標
本研究では,スカラー混合を伴う平面乱流噴流に対してレイノルズ数 Re = 3×103 ~ 3×104 の条件について乱流解析を実施する.Re = 3×103, 104, 3×104 の条件について解析を実施することで乱流スカラー混合における Re への依存性を評価する.さらに,マクロな混合過程への影響が無くなる閾値となる乱流微細スケール(このスケールよりも微細な乱流は噴流のマクロな混合過程に影響しない)を評価する.具体的には,解析データに対してフィルタリングを施すことでサブグリッドスケール(SGS)でのスカラーフラックスを評価し,グリッドスケール(GS)フラックスとの定量的な比較を行う.フィルター幅を変化させながら SGS フラックスが GS フラックスに対して何%になるのかを評価していき,SGS フラックスの寄与が無視できるほど小さくなるスケールを明らかにする.
参照URL
「KAKEN — 研究課題をさがす | 高レイノルズ数乱流噴流における微細スケールスカラー混合過程の解明 (KAKENHI-PROJECT-15K05817)」参照。
スパコンの用途
Re=104 に対する2.4億点の DNS 解析,および,Re=3×104 に対する13億点の DNS を実現するためにスパコンを使用した.
スパコンの必要性
マクロな混合過程における微細スケール乱流の役割を明らかにするためには,高レイノルズ数条件について DNS による統計データが必要となる.本研究で目指すような Re > 104 以上の高レイノルズ数条件で DNS を実施するには10億点オーダーの格子点数が必要であるため,スパコン上でのみ実行が可能な大規模解析になる.したがって,本研究の遂行にはスパコンが必須である.
今年度の成果
Re = 3×103,104, および 3×104 での DNS 解析を実施した.Re = 3×103,104 の条件について,空間精度を 3, 5, 7, 9 次精度で変化させ解析結果への影響を評価した.Re = 3×104の条件では空間 9 次精度で 13 億点の計算格子により DNS を実施した.過去の実験データとの比較およびコルモゴロフスケールの評価により,レイノルズ数への依存性が正しく再現されていることを確認した.
Movie 1:Re = 3×104での DNS 解析によるスカラー質量分率の等値面
Movie 2:Re = 3×104 での DNS 解析による第二不変量の等値面
成果の公表
査読付論文
1) S. Matsuyama, ‘Implicit Large-Eddy Simulation of Turbulent Planar Jet with Scalar Mixing,’ AIAA Journal(投稿準備中).
査読なし論文
1) 松山 新吾,スカラー混合を伴う平面乱流噴流の Implicit Large-Eddy Simulation,日本航空宇宙学会北部支部創立30周記念2017年講演会ならびに第18回再使用型宇宙推進系シンポジウム,講演論文集 JSASS-2017-H006,2017.
口頭発表
1) 松山 新吾,スカラー混合を伴う平面乱流噴流の Implicit Large-Eddy Simulation,日本航空宇宙学会北部支部創立30周記念2017年講演会ならびに第18回再使用型宇宙推進系シンポジウム,2017.
2) 松山 新吾,スカラー混合を伴う平面乱流噴流の Implicit Large-Eddy Simulation,第32回生研TSFDシンポジウム,2017.
計算情報
- 並列化手法: ハイブリッド並列
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP,自動並列
- プロセス並列数: 286-924
- プロセスあたりのスレッド数: 4-8
- 使用ノード数: 72-143
- 1ケースあたりの経過時間(時間): 120-1000
- 実行ケース数: 8
利用量
総仮想利用経費(円): 48,418,440
内訳
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
SORA-MA | 29,960,762.44 | 48,381,309 |
SORA-PP | 0.01 | 0 |
SORA-LM | 0.00 | 0 |
SORA-TPP | 0.00 | 0 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
/home | 598.94 | 5,649 |
/data | 2,849.03 | 26,874 |
/ltmp | 488.28 | 4,605 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0 |
注記: 仮想利用経費=2016年度設備貸付費用の単価を用いて算出した場合の経費
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)