太陽大気の輻射磁気流体計算
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)
報告書番号: R16J0059
- 責任者: 飯島 陽久(名古屋大学宇宙地球環境研究所)
- 問い合わせ先: 飯島 陽久(h.iijima@isee.nagoya-u.ac.jp)
- メンバ: 飯島陽久
- 利用分類: 宇宙分野(宇宙科学,宇宙理学)
概要
太陽大気モデルの計算量削減のため,アルフベン速度抑制法の検証・実装を行い,その有用性を確認した.更に,本手法を用いて太陽黒点をまるごと含む計算を実施し,対流運動の抑制により黒点が自発的に形成されることを確認した.アルフベン速度抑制法により,計算コストを今までの100分の1程度に抑えることが出来た.今後は,この計算を太陽ダイナモ活動や黒点上空のダイナミクスの理解に役立てる計画である.
目的
現実的な物理を含んだセルフコンシステントな太陽大気の計算を実施することで,非線形性の強い太陽大気の地上・衛星観測データの解釈を容易にし,理論的な理解を深め,計算コストの低減・モデルのアップデートを実施し,太陽大気の物理機構の解明に貢献すること目的とする.
目標
計算コストを低減し,今までできなかった黒点をまるごと含むような磁場が強い領域の大規模計算を可能にし,太陽ダイナモ活動や黒点上空のダイナミクスの理解に役立てる.
参照URL
なし
スパコンの用途
JSS2上では,アルフベン速度抑制法を実装した太陽大気コードを利用して,典型的なサイズの黒点をまるごと含む輻射磁気流体計算を行った.
スパコンの必要性
太陽大気の輻射磁気流体計算では,100 km以下の小スケール乱流を解像しつつ数千〜数万km規模の構造を調べることになる.太陽表面付近は衝撃波が飛び交う非線形の強い領域で,その理論研究にはスーパーコンピュータの利用が欠かせない.
今年度の成果
磁場が強く,アルフベン速度が時間ステップを著しく制限する太陽黒点などの計算において,アルフベン速度を人工的に抑制することで計算コストを削減する手法が提案されていた.今年度は,その妥当性を1次元シミュレーションを用いて予備検証した後,我々の大気計算コードへ実装した.小規模な3次元シミュレーションによるテストを経た後,手法の妥当性に確信を得たためJSS2を利用して典型的な太陽黒点全体を含む計算を実施した(Fig. 1, 2).磁場が強い場所では対流によるエネルギー輸送が抑制されるため,表面温度が下がり,磁場が場所で輻射強度が小さくなっている.今後はこれを太陽ダイナモの平均場パラメータの定量や黒点上空の大気構造の理解などに利用していきたい.
成果の公表
なし
計算情報
- 並列化手法: プロセス並列
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 非該当
- プロセス並列数: 2048
- プロセスあたりのスレッド数: 1
- 使用ノード数: 64
- 1ケースあたりの経過時間(時間): 100
- 実行ケース数: 1
利用量
総仮想利用経費(円): 449,446
内訳
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
SORA-MA | 271,786.15 | 439,685 |
SORA-PP | 0.00 | 0 |
SORA-LM | 0.00 | 0 |
SORA-TPP | 0.00 | 0 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
/home | 9.54 | 45 |
/data | 95.37 | 452 |
/ltmp | 1,953.13 | 9,263 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0 |
注記: 仮想利用経費=2016年度設備貸付費用の単価を用いて算出した場合の経費
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)