DBDプラズマアクチュエータにおける体積力特性解明に向けた放電過程の数値解析
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)
報告書番号: R16J0050
- 責任者: 大西 直文(東北大学)
- 問い合わせ先: 大西 直文(ohnishi@rhd.mech.tohoku.ac.jp)
- メンバ: 大西直文,佐藤慎太郎
- 利用分類: 基礎分野(数値解析)
概要
本事業では, 能動的流体制御デバイスである DBD プラズマアクチュエータの性能向上に向けて放電過程の数値シミュレーションを行った. DBD プラズマアクチュエータは放電に起因する電気流体力によって流れを誘起するため, 放電過程の解明は性能向上にむけて取り組むべき重要な課題の1つである. 本研究では印加電圧波形が放電に与える影響を調査し, さらに放電計算の結果を用いて誘起流れ場の計算を行い, 実験で観測されている壁面噴流が得られることを確認した.
目的
新たな能動的流体制御デバイスとして DBD (Dielectric Barrier Discharge) プラズマアクチュエータが注目されている. 本事業では高速気流中での剥離制御を目指して, 放電過程に着目することで誘起速度増大のための知見を得ることを目的とする.
目標
印加電圧波形が放電形態や生成される体積力に与える影響についてプラズマ流体モデルを用いたシミュレーションを行うことで明らかにする. さらに, 得られた知見から誘起速度を向上させる印加電圧波形を提案することを目標とする.
参照URL
なし
スパコンの用途
DBD プラズマアクチュエータにおける放電過程の計算から誘起流れ場の計算までの全ての計算のためにスパコンを利用する. また, 得られた結果や可視化用データのストレージとしても活用する.
スパコンの必要性
放電過程の計算には荷電粒子の運動と同時に電場を解く必要があり, 計算負荷の大きい Poisson 方程式を毎計算ステップ解かなければならない. さらに時間スケールがナノ秒オーダーの放電過程とミリ秒オーダーの誘起流れ場を取り扱うためにスパコンでの計算が必要不可欠である.
今年度の成果
本研究では, 三角波電圧を印加した時の放電過程のシミュレーションを行い, 実験で確認されているように放電形態は電圧が上昇する段階である positive-going phase ではストリーマ放電, negative-going phase ではグロー状の放電が得られ (Fig. 1), 電流波形についても実験結果との定性的な一致を確認した. そして, 印加電圧波形の影響について調査するために電圧振幅を変化させた計算を行った. その結果, 生成される電気流体力と振幅の関係は2つの冪関数で表せることを確認し, これは放電形態の変化が原因であることがわかった.
次に, 放電計算の結果得られた電気流体力分布を用いて静止気体中の誘起流れ場の計算を行った結果, 露出電極付近で出発渦が形成され, その後準定常的な壁面噴流が形成されることを確認した (Fig. 2). 今後は異なる印加電圧波形を印加した時の放電過程および誘起流れ場構造に与える影響について調査する予定である.
成果の公表
査読なし論文
1) S. Sato and N. Ohnishi, ‘Influence of Voltage Waveform on Electrohydrodynamic Force in a Dielectric-Barrier-Discharge Plasma Actuator’, AIAA paper 2017-1804 (2017).
口頭発表
1) 佐藤 慎太郎, 大西直文 ‘DBD プラズマアクチュエータにおける体積力の電圧波形依存性’, 日本機械学会 2016 年度年次大会, 九州大学, 2016 年 9 月
2) S. Sato and N. Ohnishi, ‘Study of Body Force Generation in Surface Dielectric Barrier Discharge for Application of Aerodynamics’, 13th International Conference on Flow Dynamics, Sendai, October 10-12, 2016.
3) S. Sato and N. Ohnishi, ‘Influence of Voltage Waveform on Electrohydrodynamic Force in a Dielectric-Barrier-Discharge Plasma Actuator’, AIAA SciTech Forum, Grapevine, Texas, January 9-13, 2017.
計算情報
- 並列化手法: プロセス並列
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 非該当
- プロセス並列数: 128
- プロセスあたりのスレッド数: 1
- 使用ノード数: 4
- 1ケースあたりの経過時間(時間): 72
- 実行ケース数: 40
利用量
総仮想利用経費(円): 1,894,412
内訳
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
SORA-MA | 1,076,137.00 | 1,769,976 |
SORA-PP | 279.50 | 2,386 |
SORA-LM | 0.00 | 0 |
SORA-TPP | 0.00 | 0 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
/home | 195.50 | 1,844 |
/data | 9,813.31 | 92,569 |
/ltmp | 2,929.69 | 27,635 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0 |
注記: 仮想利用経費=2016年度設備貸付費用の単価を用いて算出した場合の経費
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)