金星大気の対流構造に関する数値的研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)
報告書番号: R16J0048
- 責任者: 杉山 耕一朗(松江工業高等専門学校)
- 問い合わせ先: 杉山 耕一朗(sugiyama@gfd-dennou.org)
- メンバ: 安藤紘基,杉山耕一朗
- 利用分類: 宇宙分野(月・惑星,宇宙理学)
概要
重力波は運動量を輸送するため, 大気運動を理解する上で欠かせない要素である. 対流起源の重力波の伝播特性や砕波のメカニズムを考察し理解するために, 本研究では雲解像モデルを用いた数値実験を行った. 得られた結果は重力波の砕波がシアー不安定と対流不安定によって生じることを示唆するものである.
目的
金星大気の対流構造や重力波を調べる為の数値流体モデル (雲解像モデル) を開発することで, 金星探査機あかつきの観測を支援することを目的とする.
目標
金星雲層中の対流運動とそれによって生成される重力波を 1 つの数値モデルの枠組の中で同時に扱うことで, 対流起源の重力波が金星大気の運動に及ぼす影響を調べることを目標とする. 従来の重力波研究においては, 地球の重力波観測に基づいた経験的なスペクトルがモデルに組み込まれており, 重力波の励起から伝播に至るまでの全てを陽に解いているわけではない.
参照URL
なし
スパコンの用途
雲解像モデルの開発および数値計算の実行
スパコンの必要性
対流を表現するに十分な解像度と境界の影響を受けないための広い領域を確保して行うためには, スーパーコンピュータが不可欠である.
今年度の成果
これまでに行った数値実験の解析を進め, いくつかの追加実験を行った. 我々の数値計算より, 高度 90 km 付近で重力波が砕波し乱流が発生することが示された (Fig.1). Fig.1 に示すように, 乱流の生じた領域のほぼ全てでリチャードソン数 (Ri) が Ri < 0.25 であり, 一部は鉛直温位勾配が負である (dθ/dz< 0). これは重力波の砕波がシアー不安定と対流不安定の両方によって生じることを示唆するものである. 重力波の砕波が見られた高度は従来の電波掩蔽観測から予想される高度 (80--90 km) と整合的である.
成果の公表
口頭発表
1) 雲解像モデルを用いた金星大気重力波の2次元数値実験, 安藤紘基,杉山耕一朗,小高正嗣,中島健介,今村剛,林祥介, 気象学会 2016年5月
2) 雲解像モデルを用いた金星大気重力波の2次元数値実験, 安藤紘基,杉山耕一朗,小高正嗣,中島健介,今村剛,林祥介, 地球惑星科学連合連合大会, 2016年5月
3) 雲解像モデルを用いた金星大気重力波の2次元数値実験, 安藤紘基,杉山耕一朗,小高正嗣,中島健介,今村剛,林祥介, 大気圏シンポジウム 2016年12月
計算情報
- 並列化手法: プロセス並列
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 非該当
- プロセス並列数: 256
- プロセスあたりのスレッド数: 1
- 使用ノード数: 8
- 1ケースあたりの経過時間(時間): 50
- 実行ケース数: 1
利用量
総仮想利用経費(円): 60,196
内訳
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
SORA-MA | 8,233.96 | 13,542 |
SORA-PP | 0.00 | 0 |
SORA-LM | 0.00 | 0 |
SORA-TPP | 0.00 | 0 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
/home | 356.71 | 3,364 |
/data | 3,287.00 | 31,006 |
/ltmp | 1,302.08 | 12,282 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0 |
注記: 仮想利用経費=2016年度設備貸付費用の単価を用いて算出した場合の経費
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)