機体騒音低減技術の飛行実証(FQUROH)低騒音化設計研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)
報告書番号: R16J0028
- 責任者: 山本 一臣(航空技術部門 FQUROHプロジェクトチーム)
- 問い合わせ先: 伊藤 靖(ito.yasushi@jaxa.jp)
- メンバ: 山本一臣, 伊藤靖, 高石武久, 村山光宏, 坂井玲太郎, 平井亨, 田中健太郎, 雨宮和久, 中野彦, 石田崇
- 利用分類: 航空分野(航空機, 機体音響)
概要
現在, 高揚力装置及び降着装置に対する低騒音化技術は空港周辺地域の騒音低減を実現するために国際的にも注目されているが, その技術成熟度を, 将来の旅客機開発ならびに装備品開発に適用可能な段階にまで高めることを目的としたFQUROHプロジェクトの一環として本研究を実施している. これにより, 国内航空産業界における国際競争力強化に貢献するとともに, 空港周辺地域社会における騒音被害, エアラインの運航コスト (着陸料) の軽減に貢献する.
目的
「FQUROH(機体騒音低減技術の飛行実証)プロジェクト | 航空環境技術の研究開発プログラム(ECAT) | JAXA航空技術部門」参照。
目標
「FQUROH(機体騒音低減技術の飛行実証)プロジェクト | 航空環境技術の研究開発プログラム(ECAT) | JAXA航空技術部門」参照。
参照URL
「FQUROH(機体騒音低減技術の飛行実証)プロジェクト | 航空環境技術の研究開発プログラム(ECAT) | JAXA航空技術部門」参照。
スパコンの用途
FQUROHプロジェクトでは実用的な低騒音化コンセプトと先進的な数値解析技術を基礎にした低騒音化設計法の実現可能性を検証することを目的の一つとしている. 本事業コードでは, スパコンを用いて大規模なReynolds-averaged Navier-Stokes (RANS) 解析やLarge/Detached Eddy Simulation (LES/DES)などの先進的な数値解析により, 騒音発生源の詳細把握や騒音予測を行い, 低騒音化デバイスの形状設計を行った.
スパコンの必要性
FQUROHプロジェクトは, 機体騒音低騒音化という課題に対して, 最新の数値解析技術を用いた低騒音化設計を積極的に活用することにより技術成熟を加速し, フィデリティの高い設計技術開発を飛行試験によりデモンストレーションしようとするものであり, スパコン利用を前提に立案したプロジェクトである. スパコンを利用した数値解析により, 風洞試験のみでは困難な, 詳細な物理現象の把握を基礎にした低騒音化設計を行うことが可能となった.
今年度の成果
・高揚力装置スラット騒音評価のベンチマークとなる翼型を用いて, Delayed DES法を用いた非定常シミュレーション方法の技術検証 (図1) や騒音予測における流れ場パラメータ (Reynolds数など)
の影響, 低騒音化デバイスコンセプト効果確認などができた.
・スラット騒音低騒音化を行う実機部分翼型に対して, RANS定常解析やDelayed DES法を用いた非定常シミュレーションにより, 低騒音化前のスラット周りの流れ場と騒音源の詳細把握を行う事ができた. また, その計算結果に基づき, 低騒音化コンセプトの一つに対して初期形状の設計と評価を行う事ができた.

図1:高揚力装置スラット騒音評価用翼型を用いた非定常流シミュレーション法の技術検証例: (a) 計算格子; (b) 非定常計算結果の例(左:非定常渦等値面の可視化(密度で色付け) 右:遠方場騒音評価)
成果の公表
査読なし論文
1) Yamamoto, K., Hayama, K., Kumada, T. and Hayashi, K., ‘FQUROH: A Flight Demonstration Project for Airframe Noise Reduction Technology – Concept and Current Status,’ 22nd AIAA/CEAS Aeroacoustics Conference, Lyon, France, No. AIAA-2016-2709, 2016, DOI: 10.2514/6.2016-2709.
2) Murayama, M., Yokokawa, Y., Ito, Y., Yamamoto, K., Takaishi, T. and Ura, H., ‘Study on Change of Noise Generation by Slat Track Shape,’ 22nd AIAA/CEAS Aeroacoustics Conference, Lyon, France, No. AIAA-2016-2959, 2016, DOI: 10.2514/6.2016-2959.
口頭発表
1) R. Sakai, M. Murayama, Y. Ito, K. Yamamoto, M. Terracol, E. Manoha, ‘BANC-IV Category 6: DLR Slat Noise Configuration –JAXA’s Result,’ 4th AIAA Workshop on Benchmark Problems for Airframe Noise Computations (BANC-IV), June 2016, Lyon, France.
2) 山本一臣, 伊藤靖, 村山光宏, 坂井玲太郎, ‘機体騒音低減技術の飛行実証プロジェクトFQUROHにおけるCFD,’ 第48回流体力学講演会/第34回数値シミュレーション技術シンポジウム, 石川県金沢市, 1C05 (JSASS-2016-2030-A), 2016年7月.
3) 山本一臣, 葉山賢司, 熊田俊行, 林賢亮, ‘機体騒音低減技術の飛行実証FQUROHプロジェクト ―予備実証に向けて―,’ 第54回飛行機シンポジウム, 富山県富山市, 3G07 (JSASS-2016-5153), 2016年10月.
4) 村山光宏, 山本一臣, 横川譲, 伊藤靖, 平井亨, 田中健太郎, ‘FQUROH予備実証に向けたJAXAフラップ低騒音化設計,’ 第54回飛行機シンポジウム, 富山県富山市, 3G08 (JSASS-2016-5154), 2016年10月.
5) 山本一臣, 高石武久, 横川譲, 村山光宏, 伊藤靖, 有薗仁, 坂井玲太郎, 少路宏和, 香西政孝, ‘機体騒音低減技術の飛行実証FQUROHプロジェクトの進捗 (予備実証),’ 第36回流力騒音シンポジウム, 東京大学工学部, 2016年12月.
6) 村山光宏, 山本一臣, 横川譲, 伊藤靖, 高石武久, 平井亨, 田中健太郎, ‘JAXA実験用航空機のフラップから発生する空力騒音の低騒音化設計,’ 第36回流力騒音シンポジウム, 東京大学工学部, 2016年12月.
計算情報
- 並列化手法: プロセス並列
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 非該当
- プロセス並列数: 1728
- プロセスあたりのスレッド数: 1
- 使用ノード数: 54
- 1ケースあたりの経過時間(時間): 80
- 実行ケース数: 20
利用量
総仮想利用経費(円): 38,193,766
内訳
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
SORA-MA | 23,464,884.44 | 37,646,066 |
SORA-PP | 3,596.82 | 30,709 |
SORA-LM | 0.28 | 6 |
SORA-TPP | 0.00 | 0 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
/home | 79.30 | 500 |
/data | 16,283.90 | 102,831 |
/ltmp | 3,301.71 | 20,849 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 仮想利用経費(円) |
---|---|---|
J-SPACE | 190.05 | 392,801 |
注記: 仮想利用経費=2016年度設備貸付費用の単価を用いて算出した場合の経費
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2016年4月~2017年3月)