希薄空力最適化に向けたDSMC解析
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2025年2月~2026年1月)
報告書番号: R25JCWU05
利用分野: 連携大学院
- 責任者: 小原新吾, 宇宙科学研究所宇宙飛翔工学研究系
- 問い合せ先: 市川雅也(ichikawa.masaya24@ae.k.u-tokyo.ac.jp)
- メンバ: 市川 雅也, 小澤 宇志
事業概要
超低高度衛星(ここでは, 高度 300 km 以下の地球周回軌道 Very Low Earth Orbit : VLEO で運用を行う衛星を指す)は, 精度が高い画像を取得できることや, 通信時間が短縮できることなどから, 地球観測衛星や通信衛星として有用であり, 近年関心が高まっている. 宇宙航空研究開発機構 JAXAでも 2017 年に超低高度衛星技術試験機(SLATS)を打ち上げ, 超低高度衛星の技術試験を行なった. 超低高度衛星の課題の一つに大気抵抗による衛星寿命の減少が挙げられる. これは, VLEO は地表に近く大気の密度が高いため, 一般的な地球周回軌道よりも約 1000 倍もの大気抵抗を受けてしまい, 軌道を維持するための燃料使用量が多いことが原因である. また, SLATS での実証実験の際は, 衛星前面に観測機器を搭載していたため, 衛星形状の最適化は行われなかった. そのため本研究では, 大気抵抗を最小化する人工衛星形状の算出を目的とした希薄空力研究を行った.
参照URL
なし
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
将来の超低高度衛星の運用高度として想定されている高度 268 km における人工衛星周りの空気の流れは自由分子流に分類され, 希薄気体力学で扱われる. 希薄気体力学における標準的な数値シミュレーション手法は, DSMC法 (Direct Simulation Monte Carlo)であり, 本研究でもこちらの手法を使用する. DSMC 法では, 空気中の粒子一つ一つの状態を扱うため, 計算コストが高く一般的な PC では時間がかかり過ぎてしまう. そのため, 本研究では JAXA スーパーコンピュータを使用した.
今年度の成果
今年度の本研究の成果は主に 2 つある. 1 つ目は, SLATS をベースとして, 将来の超低高度衛星のための最適衛星形状を算出したことである. 最適化における設計条件では, 構体体積と太陽パネル表面積を SLATS と同様にし, また, ヘッド形状を SLATS に取り付けることができるようにヘッド形状と構体形状の接続面形状を SLATS と同様とした. さらには, 無駄なトルクの発生を抑えるため, 進行方向に垂直な面における形状を左右対称とした. フライト条件は, 将来の超低高度衛星の運用高度として想定されている高度 268 km の円軌道における大気条件(SLATS データベースを使用)とし, 表面反射モデルは Maxwell 反射モデルを使用した. 以上の条件における DSMC 法を使用した最適化の結果, 四角錐形状のヘッド, 四角錐台形状の構体, ヘッド付き太陽パネルを持つ衛星形状(図 1 参照)が大気抵抗を最小化する形状となることがわかった. なお, この際の抗力係数減少率は, 約 52 % となった. 2 つ目は, 衛星表面に複数回衝突する粒子の影響について評価したことである. これまでの研究では, 太陽パネルを含んだ衛星全体の形状最適化を行った研究はなく, 衛星表面に複数回衝突する粒子の影響が最適形状算出にどのように影響するかについて調査されていなかった. そのため, 本研究では, 上記に述べた最適形状における衛星表面に複数回衝突する粒子の影響について評価した. 結果として, 最大約 24 % ほどの粒子が衛星表面に複数回衝突していること, その内約 60 % から 70 % がヘッド形状で反射した粒子が太陽パネル形状に再度衝突していることがわかった(図 2 参照). また, 衛星全体で同じ適応係数を持つ表面加工が可能な場合では, 衛星表面に複数回衝突する粒子の影響は最適形状算出にあまり影響しないこと, 可能でない場合では, 最適形状算出の際, ヘッド形状と太陽パネル形状の位置と角度の関係性を考慮する必要がある可能性があることがわかった.
成果の公表
-口頭発表
令和7年度 宇宙航行の力学シンポジウム
JSS利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 1 - 8
- 1ケースあたりの経過時間: 75 分
JSS3利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.02
内訳
JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。
| 計算システム名 | CPU利用量(コア・時) | 資源の利用割合※2(%) |
|---|---|---|
| TOKI-SORA | 255.04 | 0.00 |
| TOKI-ST | 160792.82 | 0.17 |
| TOKI-GP | 0.00 | 0.00 |
| TOKI-XM | 0.00 | 0.00 |
| TOKI-LM | 0.00 | 0.00 |
| TOKI-TST | 0.00 | 0.00 |
| TOKI-TGP | 0.00 | 0.00 |
| TOKI-TLM | 0.00 | 0.00 |
| ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
|---|---|---|
| /home | 0.00 | 0.00 |
| /data及び/data2 | 0.00 | 0.00 |
| /ssd | 0.00 | 0.00 |
| アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) | J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
|---|
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
ISV利用量
| 利用量(時) | 資源の利用割合※2(%) | |
|---|---|---|
| ISVソフトウェア(合計) | 0.00 | 0.00 |
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2025年2月~2026年1月)


