eVTOL型火星航空機の空力特性の実験的把握
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2025年2月~2026年1月)
報告書番号: R25JDU10509
利用分野: 宇宙科学
- 責任者: 野中聡, 宇宙科学研究所宇宙飛翔工学研究系
- 問い合せ先: 大山聖(oyama.akira@jaxa.jp)
- メンバ: 佐藤允, 廣瀬隆史, 松元太一, 高橋 陽平, 大山 聖
事業概要
火星での飛行観測を実現するため, 様々なタイプの火星航空機が世界中で模索されている. 日本においてはJAXA宇宙研が中心となって火星飛行機や火星ヘリコプタ等の火星航空機に関する研究開発プロジェクトが多数行われている. 一方, 近年の電動垂直離着陸機(eVTOL)の急速な発展に伴い, 従来の固定翼飛行機やヘリコプタに加えてVector Thrust型, Lift and Cruise型eVTOL等の火星航空機への適用が検討されている. このような状況のなか, JAXA嶋らのグループでは新しいVector Thrust型有翼eVTOL(PPB型 eVTOL)の実現に向けた風洞実験をおこない, シンプルな機構でかつ高性能なeVTOLに関する知見を得ている. 当該eVTOLを火星航空機に用いることで航続性能が改善され広範な観測の実現が期待される. しかし, これらの実験ではeVTOLやロータ周りの流れ場に関するデータ取得が現状では困難である. 本研究ではPPB型eVTOLやロータ周りの流れに関する数値解析を行うことにより, これらの流れ場および空力特性を明らかにすることを目的としている.
参照URL
なし
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
JAXAで開発された流体解析ソルバー「rFlow3D」, 「FaSTAR」および「FaSTAR-MOVE」を用いて, 新しいVector Thrust型有翼eVTOLおよびロータ周りの流れに関する大規模数値シュミレーションを行うため.
今年度の成果
今年度は, 新しいVector Thrust型有翼eVTOLにおいて, 翼に付加した高揚力装置(Gurney Flap)と, 翼の上下に設置されたプロペラ流れとの干渉を調べた. 過去の実験条件[1]に基づき, 翼レイノルズ数は64000, Gurney Flapの高さを翼コード長の5%から15%まで変化させた. 数値解析ソルバーにはFaSTAR-MOVEを用い, Gurney Flap付き翼と翼上下のプロペラに関して移動重合格子を用いた解析をおこなった(図1). 図2はGurney Flap高さ5%の結果における翼後縁付近の断面での流線をプロペラありとプロペラなしの条件について示している. 翼上下に設置されたプロペラ流れによってGurney Flap近傍および翼後流の流れが変化しており, Gurney Flap付き翼の空力特性が上下のプロペラ流れによって顕著な影響を受けることが明らかになった.
また, 新しいVector Thrust型有翼eVTOLにおいてプロペラの設置角度および翼の存在がプロペラ性能に与える影響について調べた. 解析対象はSingleプロペラ, 翼なしのTandemプロペラ, 翼ありのTandemプロペラ(PPB)であり, 数値解析ソルバーにはrFlow3Dを用いた. 図3は各条件における流れ場を示している. 翼ありのTandemプロペラの条件では, 翼周りの流れによってプロペラへの流入速度が変化することで, 上下のプロペラで性能に差異が生じることが明らかとなった.
加えて, 遷音速特性に優れたLoop型プロペラ[2]におけるGurney Flap適用の効果をrFlow3Dを用いた数値解析で調べた. 図4はGurney FlapなしとGurney Flap2%の各条件における渦構造と断面速度分布を示している. Gurney Flapを付加することにより, 翼端付近の流れの剥離を低減できること, 翼端渦の渦強度が変化することなどが明らかとなった.
[1] 嶋 英志, 佐藤 允, 本多 秀輔, 中新井田 馨希, 米澤 宏一, 古後 遼大, 劉 浩, 翼に近接するプロペラを持つ有翼eVTOLにおけるガーニーフラップの効果について, 第61回飛行機シンポジウム (2023).
[2] 中新井田 馨希, 佐藤 允, 嶋 英志, 静粛ロータ「Looprop」の遷音速特性に関するCFD解析, ANSS2023 (2023).
成果の公表
-口頭発表
[1] 廣瀬 隆史, 守屋 龍, 佐藤 允, 嶋 英志, "有翼eVTOLのプロペラ特性に対する設置角と翼流れの影響に関するCFD解析", 第63回飛行機シンポジウム (2025).
[2] 松元 太一, 中新井田 馨希, 佐藤 允, 嶋 英志, "Gurney Flap付きLoopropの流れ場と音響特性に対するCFD解析を用いた初期検討", 第63回飛行機シンポジウム (2025).
JSS利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 非該当
- プロセス並列数: 600
- 1ケースあたりの経過時間: 336 時間
JSS3利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.08
内訳
JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。
| 計算システム名 | CPU利用量(コア・時) | 資源の利用割合※2(%) |
|---|---|---|
| TOKI-SORA | 2090193.11 | 0.09 |
| TOKI-ST | 9871.16 | 0.01 |
| TOKI-GP | 0.00 | 0.00 |
| TOKI-XM | 0.00 | 0.00 |
| TOKI-LM | 273.22 | 0.02 |
| TOKI-TST | 0.00 | 0.00 |
| TOKI-TGP | 0.00 | 0.00 |
| TOKI-TLM | 0.00 | 0.00 |
| ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
|---|---|---|
| /home | 0.00 | 0.00 |
| /data及び/data2 | 0.00 | 0.00 |
| /ssd | 0.00 | 0.00 |
| アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) | J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
|---|
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
ISV利用量
| 利用量(時) | 資源の利用割合※2(%) | |
|---|---|---|
| ISVソフトウェア(合計) | 351.98 | 0.25 |
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2025年2月~2026年1月)




