極超音速機の熱・空力特性予測技術の研究開発
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)
報告書番号: R24JDA201G20
利用分野: 航空技術
- 責任者: 中北和之, 航空技術部門基盤技術研究ユニット
- 問い合せ先: 松山 新吾(matsuyama.shingo@jaxa.jp)
- メンバ: 藤井 啓介, 松山 新吾, 髙橋 英美, 山本 貴弘
事業概要
極超音速で飛行する飛翔体周りには強い衝撃波が発生し, 衝撃波に圧縮された高温気体から機体へ強い熱伝達が生じる. 本研究ではそのような極超音速機周りの流れ場をCFDにより再現し, 機体へ加わる空力・加熱を正確に評価する技術を確立することを目的とする.
参照URL
なし
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
極超音速飛翔体の飛行条件ではレイノルズ数が高いことが多く, 乱流加熱を評価する必要が生じる. 本研究では Direct Numerical Simulation (DNS) と Large Eddy Simulation (LES) による乱流解析により乱流加熱を高精度に評価することを目指すため, 必然的に三次元非定常解析を実施しなければならない. このような大規模三次元解析は計算コストが非常に高く, スーパーコンピュータを使用した解析が必須である.
今年度の成果
S-520-RD1飛行試験, 再使用観測ロケット(ATRIUM)などを対象としたCFD解析を実施し, 極超音速飛翔体周りの流れ場で発生する各種の干渉流れ(舵面への衝撃波干渉, インテーク流れ, など)に関する予測精度の検証と課題抽出を実施した. 以下に得られた成果を簡単にリスト化してまとめる.
・S-520-RD1の飛行条件について層流解析および全面乱流を仮定したRANS解析を実施し, 飛行試験によって得られた熱流束データの傾向(主流動圧の増加に伴って熱流束が層流値から乱流値へ移行)を再現した(図1).
・ATRIUMのインテーク形状に対する風洞試験についてLESによる非定常解析を実施し, 3つのマッハ数条件で壁面圧力の計測データを再現した. また, 風洞試験で観測された, インテークの不始動(M = 1.5, 2.0), 始動(M = 2.5)という傾向をLESにより再現した(図2).
成果の公表
-査読なし論文
1) 松山 新吾 "S-520-RD1飛行試験データのポストフライト解析ワークショップ," 第56回流体力学講演会/第42回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム論文集, JAXA-SP-24-006, p. 93-103, 2025.
-口頭発表
1) 松山 新吾 "S-520-RD1飛行試験データのポストフライト解析ワークショップ," 第56回流体力学講演会/第42回航空宇宙数値シミュレーション技術シンポジウム, 2024.
2) 松山 新吾, 井手 優紀, 藤井 啓介, "風洞ノズルと計測模型を全て解いた極超音速境界層遷移のDNS," 令和6年度宇宙航行の力学シンポジウムプログラム, 2024.
3) 松山 新吾, "大気圏突入環境下で生じる境界層乱流遷移のDNSを高忠実に実施するための諸検討," 令和6年度宇宙航行の力学シンポジウムプログラム, 2024.
JSS利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 576 - 32680
- 1ケースあたりの経過時間: 100 時間
JSS3利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 1.21
内訳
JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | CPU利用量(コア・時) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
TOKI-SORA | 30788788.80 | 1.41 |
TOKI-ST | 16470.41 | 0.02 |
TOKI-GP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-XM | 0.00 | 0.00 |
TOKI-LM | 232105.59 | 16.75 |
TOKI-TST | 52554.02 | 0.94 |
TOKI-TGP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TLM | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 1362.46 | 0.92 |
/data及び/data2 | 105326.75 | 0.50 |
/ssd | 31433.00 | 1.68 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) | J-SPACE | 4.48 | 0.01 |
---|
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
ISV利用量
利用量(時) | 資源の利用割合※2(%) | |
---|---|---|
ISVソフトウェア(合計) | 1325.62 | 0.91 |
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)