本文へ移動

サイトナビゲーションへ移動

検索ボックスへ移動

サイドバーへ移動

ここは、本文エリアの先頭です。

CMB偏光観測衛星LiteBIRDの光学要求解析

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)

報告書番号: R24JDU20199

利用分野: 宇宙科学

PDF(準備中)

  • 責任者: 堂谷忠靖, 宇宙科学研究所宇宙物理学研究系
  • 問い合せ先: 永田 竜(nagata.ryo@jaxa.jp)
  • メンバ: 板井 雄祐, 永田 竜, 小栗 秀悟, 高倉 隼人

事業概要

 LiteBIRD は JAXA 宇宙科学研究所の戦略的中型衛星として準備中の計画である. LiteBIRD 衛星は, 数千個の検出器を備えた広視野反射型望遠鏡を搭載し, 34GHz から 448GHz という非常に広い周波数帯域で観測を行う. 観測の目的は宇宙初期のインフレーションの痕跡を探るためにマイクロ波背景放射(CMB)の偏光を精密に測定することにあるが, 銀河面からの放射の漏れこみなどが主要な系統誤差要因となる. そのため, ビーム特性(アンテナパターン)を高い精度で把握することが極めて重要である.

 2024 年度の活動では, 物理光学電磁界シミュレーションによるアンテナパターンの検討を新たに立ち上げた. 焦点面に設置したフィードから主鏡・副鏡に照射される電磁波を, 近傍界から遠方界まで順次計算し, 実測値との比較検討に足るシミュレーションモデルの構築を目指している. また, 交差偏波の誤差伝搬に関する準備的な検討などの, 従来からの系統誤差検討の活動も継続した. 本事業の取組によって, LiteBIRD が獲得する科学的成果がより確かなものになる, と期待するものである.

参照URL

マイクロ波背景放射偏光観測宇宙望遠鏡 LiteBIRD | 科学衛星・探査機 | 宇宙科学研究所」参照.

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

 望遠鏡スケールモデルのアンテナ鏡面は約 200mm 角であるが, それに対して 140GHz での光の波長は 2.14mm である. 高い周波数帯を扱うほど鏡面のグリッド分割数を細かくせざるを得ず, 計算量が急激に増加する. 1 辺あたりの分割数を 2 倍にすると, 計算規模は 4 乗で上昇するため, スタンドアローンの PC では遠からず現実的な計算時間に収まらなくなると予想される. JAXA のスーパーコンピュータが持つ並列処理能力を利用することで, シミュレーションの大規模化に対処する目論見である.

 シミュレーションでは, 入射電磁場がアンテナ鏡面の各グリッド点に生じさせる電磁界分布を評価し, そこから放射される電磁場を複素積分することで遠方界でのビーム特性を求める. MPI による並列化を用い, 観測点やソース点ごとの電磁場寄与の計算を多数のプロセスで分担することで, 計算のスケーラビリティを大幅に向上させる. 鏡面サイズが大きく且つ高周波数帯までカバーする LiteBIRD のシミュレーションを行う上で, JSS の集積された数値計算資源が必要とされる.

今年度の成果

 Kottler の電流分布法に基づく物理光学電磁界シミュレーションを実装し, MPI 並列化による高速化を行った. 試験的に, 単純化した計算条件を用いてシミュレーションコードの性能評価を実施した. 同一計算規模のシミュレーションにおいてプロセス数を 192, 480, 960, 2400 へと段階的に増加させるにつれ, 計算時間が短縮されることを確認した(図1). この結果は, 理想的な並列化効率に近いスケーリングを示すものであり, MPI 並列化の有効性を裏付けるものである. 今後は, さらに高い周波数帯を扱う計算や, 多数の焦点面ビーム入射位置や複数の周波数帯を同時に扱う計算に取り組み, LiteBIRD のビーム特性最適化に向けたシミュレーションを進めていく予定である.

Annual Report Figures for 2024

図1: 単純化した計算条件に基く副鏡から主鏡への電磁界シミュレーションの計算負荷評価. 「計算速度がプロセス数に比例した値」は, 並列化のオーバーヘッドが一切存在しないと仮定した場合の理想的な計算速度向上を示している(橙点). 現実には通信時間やロードバランスなどの要因があるため, 完全に一致するわけではないが, 今回は比較的規模を抑えた計算条件でも良好な並列化性能を得られた(青点).

 

成果の公表

なし

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: 非該当
  • プロセス並列数: 192 – 2400
  • 1ケースあたりの経過時間: 6 分

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.03

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 CPU利用量(コア・時) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 737431.47 0.03
TOKI-ST 16740.47 0.02
TOKI-GP 0.00 0.00
TOKI-XM 0.00 0.00
TOKI-LM 0.00 0.00
TOKI-TST 0.00 0.00
TOKI-TGP 0.00 0.00
TOKI-TLM 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 130.00 0.09
/data及び/data2 10066.67 0.05
/ssd 0.00 0.00

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.35 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

ISV利用量

ISVソフトウェア資源
利用量(時) 資源の利用割合※2(%)
ISVソフトウェア(合計) 0.00 0.00

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2024年2月~2025年1月)