熱音響現象における音響質量流及びそれに伴う熱輸送の数値的研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)
報告書番号: R23JACA61
利用分野: JSS大学共同利用
- 責任者: 葛生和人, 東海大学
- 問い合せ先: 葛生 和人, 東海大学(kuzuu@tsc.u-tokai.ac.jp)
- メンバ: 葛生 和人, 木村 航大
事業概要
気体の封入されたダクト内に狭い流路径かつ温度勾配を有する流路が存在する時, 音響振動が発生することがある. この現象は熱音響現象として知られており, 発生した音場は, 音響質量流と呼ばれる, 振動振幅と比べて微小な管軸方向への1方向流れを伴うことがある. そのような音響質量流は, 初期に存在していたダクト内の温度分布に影響を及ぼし, 単純熱伝導や音響振動に伴う熱輸送(ドリームパイプ効果)以外にも対流熱伝達を引き起こすようになる. この音響質量流に伴う熱輸送現象は, 熱音響現象を利用した装置(熱音響原動機や熱音響冷凍機など)の熱輸送特性への影響が大きく, 装置の性能向上のために, その特性を明らかにすることが不可避となっている. 本研究の目的は, CFDによる数値シミュレーションを実施し, 熱音響現象における音響質量流と管内温度分布への影響, ひいては熱輸送特性への影響を明らかにしていく.
参照URL
なし
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
本研究で実施される流体の数値シミュレーションは非定常圧縮性流体を対象としており, 非定常振動音場と熱輸送の相互作用を再現する必要があるため, メッシュ規模は比較的小規模ながら, 必然的に高精度かつ長時間スケール(熱輸送時間スケールで最低数秒から数十秒)でのシミュレーションとなる. また, 解析結果のデータベース構築のためには多岐にわたる計算ケースも必要となり, 総合的に大規模, 長時間のシミュレーション規模となる. このような規模のシミュレーションを実施するためには, 複数シミュレーションの長時間稼働が実現できるJAXAスパコンの利用は不可欠である.
今年度の成果
音響質量流(ゲデオン流)が熱音響デバイスの熱輸送特性にどのように影響するかを調査するため, 熱音響エンジンコア(2つ熱交換器で挟まれた蓄熱器)を有するシングルループ管(図1)に対して, 流体の数値シミュレーションを実施し熱音響現象を再現した. なお, 本数値シミュレーションでは, 直管の計算モデルを用いて, 閉ループに発生する熱音響自励振動および音響質量流(ゲデオン流)が共に再現されるように, 管出口(右端)の音響インピーダンス, 時間平均流速(ゲデオン流速)を境界条件として与えた. 作動流体は1気圧, および0.5気圧, 室温の空気, 2つの熱交換器の温度差は200Kとしている. 本解析条件で発生する音響質量流は, 設定した気圧条件により逆向きとなるが, その影響で高温熱交換器に隣接するサーマルバッファ区間(温度が室温に変化する範囲)が大きく変化することが確認され(図2), さらに, 音響質量流の影響を受けてエンジンコア内の熱流分布の変化を見積もることができた(図3).
成果の公表
なし
JSS利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 1 – 7
- 1ケースあたりの経過時間: 700 時間
JSS3利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.02
内訳
JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | CPU利用量(コア・時) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
TOKI-SORA | 594430.85 | 0.03 |
TOKI-ST | 0.00 | 0.00 |
TOKI-GP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-XM | 0.00 | 0.00 |
TOKI-LM | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TST | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TGP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TLM | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 0.00 | 0.00 |
/data及び/data2 | 0.00 | 0.00 |
/ssd | 0.00 | 0.00 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) | J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
---|
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
ISV利用量
利用量(時) | 資源の利用割合※2(%) | |
---|---|---|
ISVソフトウェア(合計) | 0.00 | 0.00 |
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2023年2月~2024年1月)