次世代吸音ライナ技術の研究開発(音響性能向上)
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2022年2月~2023年1月)
報告書番号: R22JDA101C75
利用分野: 航空技術
- 責任者: 長井健一郎, 航空技術部門航空環境適合イノベーションハブ
- 問い合せ先: 榎本俊治(enomoto.shunji@jaxa.jp)
- メンバ: 榎本俊治, 生沼秀司, 長井健一郎, 大木純一, 久保凱, 石井達哉
事業概要
超高バイパス比航空用ジェットエンジンでは, 吸音ライナの面積は従来のエンジンに比べて小さい. 本事業では, 面積が狭い吸音ライナでも高い騒音低減性能をもたらす吸音デバイス技術を開発する.
参照URL
なし
JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点
吸音ライナ形状を変化させて多数のLES計算を行うため, JAXAスパコンの計算性能とストレージ容量が必要だった.
今年度の成果
本研究では航空用ジェットエンジンの騒音を低減するために用いられる吸音ライナに音を入射させたときに起きる現象の数値シミュレーションに, インパルス応答法を用いている. 今年度はインパルス応答を二つに分割することにより, 実際に起きている現象を二つの現象の和として考えることが可能であることを示した. 図1は, インパルス応答法を用いた数値計算でインパルス応答の分割を行った例. 上段は音響ライナが有るフローダクトにインパルスを進行させた場合の音圧. 中段は音響ライナが無いフローダクトにインパルスを進行させた場合の音圧. 下段は上段から中段を引いたもので, 音響ライナ内の振動から放射される音圧である. これらのインパルス応答をそれぞれ音響ライナの共鳴周波数で畳込み積分した結果を図2に示す. 上段は音響ライナが有るフローダクトを音波が通過して音が小さくなる現象を表している. 中段は入射した音波, 下段は音響ライナから放射される音波を示している. 上段は, 中段と下段を足したものになっていることが確認できる. これより, 共鳴型の音響ライナは入射音と逆位相の音を発して消音していることを確認した.
図1(ビデオ): インパルス応答(音圧)と, その分割. [上段] 音響ライナが有るフローダクトのインパルス応答. [中段]音響ライナが無いフローダクトのインパルス応答. [下段]音響ライナから放射されたインパルス応答.
図2(ビデオ): インパルス応答をそれぞれ畳込み積分した結果(音圧). [上段] 音響ライナの効果を示している. [中段]入射した音波. [下段]音響ライナから放射される音波. 音響ライナが放射する音が入射音を打ち消していることが確認できる.
成果の公表
-査読なし論文
(1) 榎本 俊治, 生沼 秀司, 長井 健一郎, 大木 純一, 石井 達哉, 吸音ライナの数値解析においてインパルス応答法を用いた吸音率の評価, 宇宙航空研究開発機構特別資料 JAXA-SP-22-007, pp.223-236
(2) 榎本 俊治, インパルス応答法を用いた数値解析による航空エンジン用音響ライナの研究, 日本音響学会 騒音・振動研究会資料 N -2023-10
(3) Shunji ENOMOTO , Hideshi OINUMA , Kenichiro NAGAI , Junichi OKI , Gai KUBO , Tatsuya ISHII, Yo Murata, “Performance Analysis of Acoustic Liner with Fine-Perforated-Film by Numerical Simulation Using Impulse Response Method”, The 2023 AIAA Aviation Forum, (2023-06-13発表予定)
JSS利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: OpenMP
- プロセス並列数: 2 – 400
- 1ケースあたりの経過時間: 100 時間
JSS3利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.68
内訳
JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | CPU利用量(コア・時) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
TOKI-SORA | 17756094.67 | 0.77 |
TOKI-ST | 111388.33 | 0.11 |
TOKI-GP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-XM | 0.00 | 0.00 |
TOKI-LM | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TST | 78494.20 | 2.07 |
TOKI-TGP | 0.00 | 0.00 |
TOKI-TLM | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 7.69 | 0.01 |
/data及び/data2 | 7483.08 | 0.06 |
/ssd | 393.85 | 0.05 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) | J-SPACE | 20.86 | 0.09 |
---|
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
ISV利用量
利用量(時) | 資源の利用割合※2(%) | |
---|---|---|
ISVソフトウェア(合計) | 414.19 | 0.29 |
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2022年2月~2023年1月)