JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2018年4月～2019年3月)

報告書番号: R18JR2402

利用分野: 宇宙技術

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• 責任者: 松浦直人, EORCセンター長
• 問い合せ先: 可知美佐子(kachi.misako@jaxa.jp)
• メンバ: 可知 美佐子, 日原 勉, 相木 秀則, 大石 俊

事業概要

JAXAで作成する衛星海洋・雪氷プロダクトを最大限に活用し, 日本一の高解像度(約3km分解能)の海洋モデル及びデータ同化システムを用いて, 欠損域のない「海中天気予報」を作成し, 衛星情報をより身近で利用可能なものにすると同時に, 極域を中心とした気候変動研究を進め, 地球温暖化予測や影響評価の精度を向上する.

参照URL

「海洋環境監視 | 課題分野研究 | JAXA 第一宇宙技術部門 地球観測研究センター（EORC）」参照.

JSS2利用の理由

非常に高解像度(3km)な領域海洋モデルに衛星データを毎日に同化し, 10日～80日先までの海中の三次元物理量を予報するため, EORCで通常利用しているLinux計算機では実行ができないため, スパコンが必要である.

今年度の成果

海洋研究開発機構(JAMSTEC)と連携して, 昨年度までにJSS2で構築した日本南岸域を対象とした高解像度海洋データ同化システムを名古屋大学の協力のもとで修正し, 再構築した. モデルを駆動する外力データを米国国立気象局(NOAA NCEP)再解析データから気象庁55年再解析(JRA55)データに変更し, 氾濫原モデル(CaMa-Flood)の河川データと衛星全球降水マップ(GSMaP)の降水データを用いた淡水フラックスを新たに導入した. また, 局所アンサンブル変換カルマンフィルタ(LETKF)を用いて衛星海面水温データ等を同化する際の安定性をより高めるためにIncremental Analysis Updates(IAU)を行うようにした. この再構築に伴い, システムのパッケージ化されたことで, 移植性が高まり, 計算領域の拡大や変更が容易になったことが確認された.

また, 名古屋大学と連携して, 昨年度構築した西部太平洋広域・東南アジア領域高解像度3次元海洋同化システム(水平解像度:1/12°・1/36°)に衛星海面塩分の同化と蒸発量・降水量・河川流出量を含む淡水フラックスを新たに実装し, JSS2で試験を行った. 西部太平洋広域システムでは台風の通過に伴う海面水温や海面塩分の低下が再現され, 黒潮・黒潮続流の流路の改善も確認された. 東南アジア領域システムでは夏季の河川流出量が多い時期にメコン川河口で形成された低塩分水, ベトナム沖に形成される夏季の局所的な冷水域や冬季の冷舌が再現されており(図1), 海洋環境監視への応用が期待される.

図1(ビデオ): 南アジアシステムによる2015年8月のシミュレーション結果. 上段は海面水温, 下段は海面塩分濃度. 左列は衛星による観測結果, 中列はデータ同化した場合, 右列はデータ同化がなかった場合.

成果の公表

-査読付き論文

Miyazawa, Y., S. M. Varlamov, T. Miyama, X. Guo, T. Hihara, K. Kiyomatsu, M. Kachi, Y. Kurihara, H. Murakami, "Assimilation of high-resolution sea surface temperature data into an operational nowcast/forecast system around Japan using a multi-scale three dimensional variational scheme", Ocean Dynamics, 67, 713-728, 2017.

-口頭発表

Aiki, H., Coastal physical data from satellite and assimilation, 11th GEOSS Asia-Pacific Symposium, Kyoto, 2018年10月

Ohishi, S., T. Hihara, H. Aiki, J. Ishizaka, Y. Miyazawa, and M. Kachi, An LETKF-based ocean reanalysis for the Asia-Oceania region using Himawari-8 SSTs, JpGU 2018, Makuhari, Chiba, 2018年5月

Ohishi, S., T. Hihara, H. Aiki, J. Ishizaka, Y. Miyazawa, and M. Kachi, An LETKF-based ocean reanalysis for the Asia-Oceania region using Himawari-8 SSTs, IWMO2018, Brazil, 2018年6月

大石俊, 日原勉, 相木秀則, 石坂丞二, 宮澤泰正, 可知美佐子, 西部太平洋・東南アジア域における高解像度海洋同化システムの構築, 名古屋大学宇宙地球環境研究所研究集会「東シナ海の物質循環ならびに基礎生産に関わる物理・化学・生物過程」, 愛知県, 2018年6月

大石俊, 日原勉, 相木秀則, 石坂丞二, 宮澤泰正, 可知美佐子, ひまわり8号海面水温データを用いた東南アジア・西部太平洋域における高解像度海洋同化システムの構築,第22回データ同化夏の学校, 青森県, 2018年8月

大石俊, 日原勉, 相木秀則, 石坂丞二, 宮澤泰正, 可知美佐子, 西部太平洋・東南アジア域における高解像度海洋同化システムの構築, 2018年度日本海洋学会秋季大会, 東京都, 2018年9月

大石俊, 日原勉, 相木秀則, 石坂丞二, 宮澤泰正, 可知美佐子, An LETKF-based ocean reanalysis for the Asia-Oceania region using Himawari-8 SSTs, インド洋/太平洋域における海洋循環/環境応用に関する研究集会, 愛知県, 2018年9月

大石俊, 日原勉, 相木秀則, 石坂丞二, 宮澤泰正, 可知美佐子, 西部太平洋・東南アジア域における高解像度海洋同化システムの構築, 2018年度日本気象学会秋季大会, 宮城県, 2018年10月

大石俊, 日原勉, 相木秀則, 石坂丞二, 宮澤泰正, 可知美佐子, 西部太平洋・東南アジア域における高解像度海洋同化システムの構築, 2018年度大気海洋相互作用に関する研究集会, 京都府, 2018年12月

大石俊, 日原勉, 相木秀則, 石坂丞二, 宮澤泰正, 可知美佐子, 西部太平洋・東南アジア域における高解像度海洋同化システムの構築, 2018年度赤潮研究集会, 愛媛県, 2019年1月

大石俊, 日原勉, 相木秀則, 石坂丞二, 宮澤泰正, 可知美佐子, 西部太平洋・東南アジア域における高解像度海洋同化システムの構築,研究集会「宇宙地球環境の理解に向けての統計数理的アプローチ」, 東京, 2019年2月

Ohishi, S., T. Hihara, H. Aiki, J. Ishizaka, Y. Miyazawa, and M. Kachi, An LETKF-based ocean reanalysis for the Asia-Oceania region using Himawari-8 SSTs and SMOS/SMAP SSS, 4th International Joint Workshop on Computationally-Intensive Modeling of the Climate System and 9th OFES International Workshop, Fukuoka, 2019年3月

Ohishi, S., T. Hihara, H. Aiki, J. Ishizaka, Y. Miyazawa, and M. Kachi, An LETKF-based ocean reanalysis for the Asia Oceania region using Himawari-8 SSTs and SMOS/SMAP SSS, 20th Pacific Asian Marginal Seas, Kaohsiung, 2019年3月

日原勉, 宮澤泰正, Varlamov Sergey, 美山透, 可知美佐子, 村上浩, 高解像度領域海洋データ同化プロダクトJCOPE-T DAの紹介とその評価, 2018年度大気海洋相互作用に関する研究集会, 京都府, 2018年12月

Miyazawa, Y., T. Hihara, S. M. Varlamov, T. Miyama, M. Kachi, H. Murakami, N. Ono, Y. Kurihara, Utilization of satellite observation data for ocean state forecasts, The Joint PI Meeting of JAXA Earth Observation Missions FY 2018, Tokyo, 2019年1月

-ポスター

Hihara, T., Y. Miyazawa, T. Miyama, M. Kachi, H. Murakami, and Y. Kurihara, Bias Correction of satellite SST for ocean assimilation product using LETKF, GHRSST XIX, Darmstadt, Germany, 2018年6月

Ohishi, S., T. Hihara, H. Aiki, J. Ishizaka, Y. Miyazawa, and M. Kachi, An LETKF-based ocean reanalysis for the Asia Oceania region using Himawari-8 SSTs, The Joint PI Meeting of JAXA Earth Observation Missions FY 2018, Tokyo, 2019年1月

Hihara, T., Y. Miyazawa, V. Sergey, T. Miyama, M. Kachi, and H. Murakami, The high resolution regional ocean assimilation product "JCOPE-T DA" using satellite SST data, The Joint PI Meeting of JAXA Earth Observation Missions FY 2018, Tokyo, 2019年1月

-Web

https://www.eorc.jaxa.jp/ptree/ocean_model/index_j.html

JSS2利用状況

計算情報

• プロセス並列手法: MPI
• スレッド並列手法: 自動並列
• プロセス並列数: 20 - 32
• 1ケースあたりの経過時間: 2.75 分

利用量

総資源に占める利用割合※1(%): 0.77

内訳

JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。

※1 総資源に占める利用割合：3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合：対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2018年4月～2019年3月)