金星大気の対流構造に関する数値的研究
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2018年4月~2019年3月)
報告書番号: R18JACA14
利用分野: JSS2大学共同利用
- 責任者: 杉山耕一朗, 松江工業高等専門学校
- 問い合せ先: 杉山 耕一朗(sugiyama@gfd-dennou.org)
- メンバ: 安藤 紘基, 杉山 耕一朗
事業概要
惑星の対流構造を調べる為の汎用的な数値流体モデル (雲解像モデル) の開発と, その金星大気への適用を進めることで, 金星探査機あかつきの観測支援のために必要とされる数値モデル基盤の整備と数値シミュレーションデータの提供を目的とする. 雲解像モデルを用いた数値実験によって得られる対流運動の特徴や対流起源の重力波の性質は, 金星探査機あかつきによって観測される様々な高度での雲の形態や重力波の性質を解釈する上での基礎となるものである. 数値実験の結果と金星探査機あかつきの観測結果を比較検討することで, 金星の対流現象のメカニズムに対する理解が進むことが期待される.
参照URL
なし
JSS2利用の理由
雲解像モデルの開発および数値計算の実行にスーパーコンピューターを用いることにした. 対流や重力波を表現するには数十から数百メートルの解像度が必要である. 一方で, 境界の影響を排除し, 金星探査機あかつきのデータと比較検討するためには, 数百から数千キロメートルの水平領域が必要である. このような高分解能で広い計算領域を持つ数値シミュレーションは, スーパーコンピュータでのみ実行可能である.
今年度の成果
金星の対流と重力波の伝播を調べるために, 高い鉛直解像度と広い計算領域を兼ね備えた 3 次元数値シミュレーションを実行した. 高い鉛直解像度と広い計算領域を用いた理由は以下の通りである. (1) 従来の 3 次元シミュレーション (Lefevre et al., 2017) では, 水平領域は比較的狭く (36 km), 鉛直解像度は粗い (dz = 60 m). (2) これまでの我々の水平鉛直 2 次元のシミュレーションでは, 重力波に伴う熱と運動量の輸送を議論するためには比較的小さな鉛直解像度が必要であることを示している.
得られた結果の 1 例を図 1~ 図 3 に示すが, 対流領域での運動と重力波の伝播がうまく得られた. 対流層では, 鉛直方向の速度は約 2 m/s であり, この値は Imamura et al. (2014) の結果と整合的である. 対流層より上部 (z > 55 km) では, 対流によって引き起こされる重力波と重力波に伴う温位擾乱が見られる. 温位偏差と鉛直速度の振幅は高さと共に増加する. 得られた一連の結果の詳細な解析は今後の課題である.
成果の公表
-ポスター
Sugiyama, K., Odaka, M., Nakajima, K., Ishiwarari, M., Imamura, T., Hayashi, Y.-Y., 2018: A Three-dimensional Numerical Simulation of Venus’ Cloud-level Convection, JPGU meeting 2018, 2018/05, Makuhari Messe (Japan).
JSS2利用状況
計算情報
- プロセス並列手法: MPI
- スレッド並列手法: 非該当
- プロセス並列数: 128 – 1024
- 1ケースあたりの経過時間: 100 時間
利用量
総資源に占める利用割合※1(%): 0.04
内訳
JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。
計算システム名 | コア時間(コア・h) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
SORA-MA | 356,945.64 | 0.04 |
SORA-PP | 0.00 | 0.00 |
SORA-LM | 0.00 | 0.00 |
SORA-TPP | 0.00 | 0.00 |
ファイルシステム名 | ストレージ割当量(GiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
/home | 267.53 | 0.28 |
/data | 2,465.25 | 0.04 |
/ltmp | 976.56 | 0.08 |
アーカイバシステム名 | 利用量(TiB) | 資源の利用割合※2(%) |
---|---|---|
J-SPACE | 0.00 | 0.00 |
※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.
※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.
JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2018年4月~2019年3月)