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極超音速飛行に向けた流体・燃焼の基礎研究

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2021年2月~2022年1月)

報告書番号: R21JCMP18

利用分野: 競争的資金

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  • 責任者: 沖田耕一, 研究開発部門第四研究ユニット
  • 問い合せ先: 髙橋 政浩(takahashi.masahiro@jaxa.jp)
  • メンバ: 福井 正明, 長谷川 進, 井上 拓, 小寺 正敏, 宗像 利彦, 高橋 正晴, 富岡 定毅, 髙橋 政浩, 山田 剛治

事業概要

本研究は, 地上風洞設備で超音速燃焼試験を行う際に問題となる, 風洞気流加熱用燃焼ガスの混入や気流の乱れが燃焼過程に及ぼす影響について, 風洞試験とCFDの両面から現象解明し, こうした風洞依存性の影響を再現できる数理モデルを提案し, それらを組み込んだCFDベースのツールを構築することで, 風洞試験データから実飛行データを推定可能にすることを目標としている. 最終的には, 飛行試験を実施して実飛行データを取得し, 実飛行データと対応する風洞試験データを用いてツール検証を行う計画である.

参照URL

なし

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

近年, 燃料として超音速燃焼器でも炭化水素系燃料が注目されていることから, 本飛行試験でも燃料にエチレンを用いる計画である. エチレンの燃焼反応過程は多くの化学種が関与する複雑なものであり, 風洞気流組成の違いを評価可能な反応機構を用いた燃焼CFDは計算負荷が高い. さらに, 試験機供試体形状やそれに搭載する燃焼器供試体の内部流路形状の設計では, 数多くのパラメトリック計算を限られた期間内に実施しなければならない. よって, 高い計算能力を持つJSSの利用が必要不可欠である.

今年度の成果

(1) 超音速燃焼に対する設備依存性を予測するCFDツールの構築

JAXAが計画している超音速燃焼飛行試験において, エチレンを燃料とする供試体燃焼器の性能を予測するCFDツールの構築を進めた. 本ツールは地上試験と飛行試験の差を予測するためのものであるが, その差を生む要因の一つとして考えられていた気流に水蒸気が含まれることの影響については, 適切な反応機構を組み込むことで対処しようと考えた. 本ツールはRANS法の採用及び, 簡略化反応機構とDiagonal Algorithmの適用により, Baseline格子に対して1~2日で収束解を得ることが可能となった. 本ツールでパラメータを調整するために, 飛行供試体燃焼器内流れを地上試験設備であるRJTFのM6S(水蒸気無)・M6V(水蒸気有)条件で計算し, 既に実施された試験の壁圧分布データと比較を行った結果, 通常の層流燃焼を仮定して, 乱流モデルモデル及び乱流シュミット数を変えても試験結果を再現することはできなかった. そこで次にTurbulence Chemistry Interaction (TCI)モデルの一つであるBerglundらのPartially Stirred Reactor (PaSR)モデルを組み込んだところ, 本モデルの適用により壁圧分布については試験結果との一致が改善された(Fig.1). このほか, 飛行試験の代表的な3つの気流条件において供試体燃焼器流れをCFDで予測し, 得られた燃焼器作動特性に基づき飛行試験における燃料供給量プロファイルを検討した.

(2) 飛行試験機の熱・空力解析

風洞試験データとの比較により妥当性を検証したCFDを用いて, 超音速燃焼飛行試験供試体の空力解析を行い, 飛行マッハ数2から7の範囲に対する空力特性データベースを構築し, これを用いて飛行軌道計算を行った. また, 飛行試験供試体への空力加熱をスタントン数として算出し, それを入熱条件として飛行試験供試体の熱解析を行い, 各部の温度上昇を予測した. その結果, 溶損が危惧されるほどの温度上昇が生じないことを確認した. 飛行試験供試体表面の圧力係数と機体周りのマッハ数分布の一例をFig.2に示す.

(3) 飛行試験機体システム搭載機器類の冷却評価のための熱流体解析

超音速燃焼飛行試験の機体システムに搭載される慣性センサユニット(IMU)などの電子機器類は, 打上げ前から作動させる必要がある. そのため, そうした機器類が限られたスペース内に密集して搭載されるモジュール(CI部)内では, 機器からの発熱により温度が上昇し, 機器の誤動作や故障の発生が懸念される. これを防ぐため, 本機体システムでは, 打上げまでの間, 窒素ガスを外部からホースを介してCI部内に注入して温度上昇を抑える方法を採用した. CI部内は複雑な空間であるため, 冷媒ガスが各電子機器から奪う熱量をスタントン数として算出し, 簡易評価ツールに入力条件として与え, 機器表面温度の時間変化を予測し, 冷却効果を評価した. 熱流体解析の結果の一例として, Fig.3に, 冷媒ガスの流線(色はガス温度を表す)と搭載機器の表面温度分布を示す. 左図は機体システム先端側から見た図, 右図は鳥観図である.

(4) 空力加熱量に対する設備依存性を予測するツールの構築

本年度は, 壁面境界条件として温度分布を与えて, マッハ6.7の極超音速流中の球頭円柱模型周りの熱流束分布の再計算を実施した. この変更により, 計算結果は推算式と非常に良い一致を示しており妥当性を検証できたが, 実験結果より低い値となった. また, 設備依存性として気流乱れを考慮した場合, 考慮しない場合に比べて熱流束値が大きくなり実験値に近づくことが明らかになった(Fig.4).

Annual Reoprt Figures for 2021

図1: PaSRモデルを適用したCFDとRJTF試験結果との比較(燃焼器上面壁圧分布)

 

Annual Reoprt Figures for 2021

図2: 飛行試験供試体表面の圧力係数と機体周りのマッハ数分布の例

 

Annual Reoprt Figures for 2021

図3: 冷媒ガスの流線(色は温度を表す)および搭載機器の表面温度分布, 左:上流側から見た図, 右:鳥観図

 

Annual Reoprt Figures for 2021

図4: 球頭円柱模型の表面熱流束分布:マッハ数6.7

 

成果の公表

-査読付き論文

1) Takahashi, Tomioka, Kodera, Kobayashi, Hasegawa, Shimizu, Aono, and Munakata, ''Numerical Study on Combustor Flow-Path Design for a Scramjet Flight Experiment,'' Trans. JSASS Aerospace Tech. Japan, Vol. 19, No. 3, pp. 415-423, 2021, DOI: 10.2322/tastj.19.415

-査読なし論文

1) 小寺, 髙橋, 小林, 富岡, "超音速燃焼飛行試験供試体のCFDによる性能予測について" 第61回航空原動機・宇宙推進講演会講演集, JSASS-2022-0080, 2022年.

2) Takahashi, Tomioka, Takegoashi, Kobayashi, Onodera, and Saito, ''Ground Test Evaluation of a Supersonic Combustor Model for JAXA Flight Experiment in Mach 6 Flight Condition,'' Proceedings of the 33rd ISTS, ISTS-a-14, 2022.

-招待講演

1) 谷, ''風洞依存性補正ツール開発に向けた実飛行データの取得について'' 基調講演4, 第59回 燃焼シンポジウム, 2021.

-口頭発表

1) 小寺, 髙橋, 小林, 富岡, "超音速燃焼飛行試験供試体のCFDによる性能予測について" 第61回航空原動機・宇宙推進講演会, 2022年.

2) Takahashi, Tomioka, Takegoashi, Kobayashi, Onodera, and Saito, ''Ground Test Evaluation of a Supersonic Combustor Model for JAXA Flight Experiment in Mach 6 Flight Condition,'' The 33rd ISTS, 2022.

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: OpenMPI+自動並列
  • プロセス並列数: 1 - 960
  • 1ケースあたりの経過時間: 70 時間

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 4.31

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 CPU利用量(コア・時) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 101187946.33 4.92
TOKI-ST 255159.10 0.31
TOKI-GP 0.00 0.00
TOKI-XM 0.00 0.00
TOKI-LM 15188.29 1.13
TOKI-TST 158.27 0.00
TOKI-TGP 0.00 0.00
TOKI-TLM 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 345.91 0.34
/data及び/data2 23094.24 0.25
/ssd 702.95 0.18

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 8.34 0.06

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

ISV利用量

ISVソフトウェア資源
利用量(時) 資源の利用割合※2(%)
ISVソフトウェア(合計) 3909.74 2.74

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2021年2月~2022年1月)


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所在地

JAXA(宇宙航空研究開発機構) 調布航空宇宙センター
所在地 〒182-8522 東京都
調布市深大寺東町7-44-1