JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2021年2月～2022年1月)

報告書番号: R21JACA47

利用分野: JSS大学共同利用

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• 責任者: 松野隆, 鳥取大学
• 問い合せ先: 松野 隆(matsuno@tottori-u.ac.jp)
• メンバ: 福嶋 祐貴, 原口 徹, 星 健夫, 金崎 雅博, 岸 祐希, 森澤 征一郎, 松野 隆, 南角 卓弥, 岡田 慎太郎, 髙野 照周

事業概要

プラズマアクチュエータ (PA) は放電プラズマを利用した流体制御デバイスであり, プラズマの移動によって平滑な物体表面から壁面噴流が生成できるという, 流体力学的に非常に応用価値の高い特徴を持つ. 近年申請者らにより小スケールのPAを多数用いることにより, 表面に体積力分布を与える方法が提案されている. 本研究では高速流の境界層制御を念頭に置き, 3次元境界層の速度プロファイルを任意に制御するためのPA適用手法とその最適化手法について知見を得ることを目的とする.

参照URL

なし

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

計算コストが高い大規模な3次元流体解析と空力設計を行うためにはスーパーコンピュータの演算能力が必要である. またJAXA JSS3は空力解析ツールの利用環境が整っており研究に最適である.

今年度の成果

今年度は, 昨年度の成果をもとに, 主に3次元翼面上の境界層流れ制御手法の調査と最適設計手法の応用について研究を実施した.

境界層流れ制御手法調査においては, 後退翼付き平板翼を対象にRANSおよびLESにより境界層の数値解析を行った. 解析は鳥取大学において進められている風洞試験の条件を基盤として流速およびレイノルズ数を一致させた計算を行った. 数値計算にはJAXAで開発されたFaSTARを用いた. またグリッド生成には同じくJAXAで開発された自動格子生成ソフトウェアであるBOXFUNと商用ソフトウェアを併用した. LES解析における計算格子は, 低解像度のケースで半裁模型に対して2700万点, 高解像度のケースでは, 翼幅10%の無限後退翼モデルに対して6400万点である. 図は, 無限後退翼モデルにおいてU = 20 m/sに設定した際のベース流れ, および境界層へプラズマアクチュエータを模擬した体積力ソースを付与した場合の2ケースについての流れ方向表面摩擦分布を表している. 境界層へ前縁垂直に体積力を導入した場合には, 表面摩擦が急増する位置, すなわち乱流遷移位置が大幅に後方に遅延していることが確かめられた. なおこれらの解析結果は風洞試験と良い一致を示しており, 数値解析の妥当性と, 制御手法のロバストネスが同時に確かめられた.

最適設計手法については, 高解像度のコストの高い計算を用いる際にネックとなるケース数の増大を可能な限り抑えるため, 多変数最適化における変数を縮約する手法を提案しベンチマーク問題について適用した. これによって, 面分布する体積力ソースの最適設計を行うための基盤を構築できた. 今後は本研究の知見を用い, 計算負荷面から実現できなかったLESを用いた最適設計についても実施を検討する.

図1: 平板後退翼面上の表面摩擦係数分布:プラズマアクチュエータ駆動による遷移遅延効果

成果の公表

-口頭発表

福嶋祐貴, 松野隆, "後退翼境界層の横流れ抑制に関する数値解析", 第59回飛行機シンポジウム, 2021

Yuto Miwa, Ikuya Yoshimi, Takashi Matsuno, Dongyoun Kwak, "Boundary-Layer Transition Control by Plasma Crossflow Reduction in Swept Wing", Asia-Pacific International Symposium on Aerospace Technology, 2021

JSS利用状況

計算情報

• プロセス並列手法: MPI
• スレッド並列手法: 非該当
• プロセス並列数: 48 - 9984
• 1ケースあたりの経過時間: 10 時間

JSS3利用量

総資源に占める利用割合※1(%): 0.20

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

※1 総資源に占める利用割合：3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合：対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

ISV利用量

※2 資源の利用割合：対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2021年2月～2022年1月)