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海洋衛星データ同化システムの構築検討

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2020年4月~2021年3月)

報告書番号: R20JR2402

利用分野: 宇宙技術

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  • 責任者: 沖理子, 第一宇宙技術部門地球観測研究センター
  • 問い合せ先: 可知 美佐子(kachi.misako@jaxa.jp)
  • メンバ: 可知 美佐子, 大石 俊

事業概要

近年の衛星観測の発達に伴い, 赤外線センサーによる高頻度・高解像度の海面水温の観測値が得られるようになったが, 赤外線を透過しない雲域では欠損値が生じる. データ同化はこのような高頻度の観測値を十分に活かしながら欠損値のないより精度の高い3次元の海洋場を再現することができる. そこで, 本研究ではJAXA Supercomputer System Generation 2/3(JSS2/3)にてJAXAの衛星観測データをアンサンブルカルマンフィルタで同化する海洋データ同化システムを構築する.

参照URL

海洋領域 | 研究内容 | JAXA 第一宇宙技術部門 地球観測研究センター(EORC)」参照.

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

高解像度の海洋モデルのアンサンブル計算およびアンサンブルカルマンフィルタによるデータ同化計算は非常に大規模な計算である. そこで, JSS2/3のような大規模計算設備によって, 初めて可能となる.

今年度の成果

近年の衛星やアルゴフロートなどの観測技術の発達によって, 高い時空間解像度の観測値が得られるようになった. これらの観測値を活用した短い時間間隔のデータ同化を行うことで, 解析値の精度が改善されることが期待される. しかし, データ同化によって力学的バランスを壊すと, 重力波ノイズを引き起こす初期ショックが発生する. 特に短い時間間隔でのデータ同化は, モデル積分による初期ショックの緩和時間が短いため, 力学的バランスが大きな問題となりうる. 本研究は, 通常は1週間程度のデータ同化サイクルであるところを1日と大幅に短くし, 高頻度観測データを活用する海洋データ同化システムを研究する. この際, 力学的バランスによる問題に対応するため, 流れ依存した背景誤差共分散を扱うアンサンブルカルマンフィルタを適用する. 力学的なバランスによる致命的な問題を回避し, アンサンブルスプレッドの縮退や重力波ノイズによる汚染を防ぐ有効な手法について調査した.

アンサンブルスプレッドの縮退を防ぐ4種類の共分散膨張法[1: Multiplicative inflation(MULT), 2: 不適用(NONE), 3: Relaxation-to-prior perturbation(RTPP;Zhang et al. 2004), 4: Relaxation-to-prior spread(RTPS;Whitaker and Hamill 2012)]と解析インクリメントを分散して与えるIncremental analysis update法(IAU法;Bloom et al. 1996)の適用・不適用の2種類を組み合わせた8種類の感度実験, 6種類のRTPPとRTPSの緩和パラメータ(αRTPP/RTPS = 0.5, 0.6, …, 1.1)を与えた12種類の感度実験を行った. 得られた解析値の地衡流非平衡成分を診断するためにNonlinear balance equation(NBE;Zhang et al. 2001)の残差 ΔNBE, 解析値の精度の比較をするために観測値とのRoot mean square deviation(RMSD)を計算した.

感度実験の結果を比較したところ, 解析値の地衡流平衡や精度はRTPP/RTPSとIAUによって有意に改善し, MULTによって有意に改悪していた(図1, 2). また, 本研究によって, RTPP/RTPSとIAUを組み合わせることで海洋データ同化システムが安定的に動作し, 最も良い地衡流平衡とデータの精度が得られた. なお, RTPPとRTPSの緩和パラメータは0.8-0.9程度が最も適切だった(図3, 4).

Annual Reoprt Figures for 2020

図1: 2016-17年平均の(a)MULT+IAU, (b)MULT, (c)NONE+IAU, (d)NONE, (e)RTPP09+IAU, (f)RTPP09, (g)RTPS09+IAU, (h)RTPS09実験における地衡流平衡の指標ΔNBE(色), 海面高度(等値線). ここで, MULTとIAUを組み合わせた実験をMULT+IAU実験, 緩和パラメータαRTPP=0.9のRTPP実験をRTPP09実験のように表記している. ΔNBEが小さいほど地衡流平衡がより成り立っていることを示している. また, MULT+IAU, MULT実験において他の実験と異なるカラーバーを使用した.

 

Annual Reoprt Figures for 2020

図2: 図1と同様. ただし, 海面高度偏差の観測データセット(Ducet et al. 2000)に対するRMSD(色). RMSDが小さいほど解析値の精度が良いことを示している.

 

Annual Reoprt Figures for 2020

図3: 2016-17年およびシステム領域で平均したRTPP04-09+IAU実験(橙色)およびRTPS04-09+IAU実験(水色)のΔNBE. NONE+IAU実験に対して有意に改善している場合は白丸で, 有意な改善・改悪が見られない場合は水色・橙色の丸で表している. 黒線はNONE+IAU実験の値である.

 

Annual Reoprt Figures for 2020

図4: 図3と同様. ただし, (a)海面高度, (b)海面高度偏差の観測データセットに対するRMSD.

 

成果の公表

-口頭発表

1. 大石俊, 日原勉, 相木秀則, 石坂丞二, 宮澤泰正, 可知美佐子, 三好建正「アンサンブルカルマンフィルタを用いた海洋データ同化システムの開発」, 第24回海洋データ同化夏の学校, オンライン, 2020年8月

2. 大石俊, 日原勉, 相木秀則, 石坂丞二, 宮澤泰正, 可知美佐子, 三好建正「アンサンブルカルマンフィルタを用いた海洋データ同化システムの力学的非平衡の改善」, 日本海洋学会2020年度秋季大会, オンライン, 2020年11月

3. 大石俊, 日原勉, 相木秀則, 石坂丞二, 宮澤泰正, 可知美佐子, 三好建正「アンサンブルカルマンフィルタを用いた海洋データ同化システムの力学的非平衡の改善」, 研究集会「宇宙地球環境の理解に向けての統計数理的アプローチ」, オンライン, 2020年12月

4. 大石俊, 日原勉, 相木秀則, 石坂丞二, 宮澤泰正, 可知美佐子, 三好建正「アンサンブルカルマンフィルタを用いた海洋データ同化システムの力学的非平衡の改善」, 第11回データ同化ワークショップ, オンライン, 2021年2月

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: 自動並列
  • プロセス並列数: 4 - 400
  • 1ケースあたりの経過時間: 200 分

JSS2利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.98

 

内訳

JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
SORA-MA 5,697,212.59 1.08
SORA-PP 0.00 0.00
SORA-LM 0.00 0.00
SORA-TPP 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 42.92 0.04
/data 83,866.16 1.62
/ltmp 8,789.07 0.75
アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 1.39

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 7,154,288.48 1.54
TOKI-RURI 0.00 0.00
TOKI-TRURI 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 14.31 0.01
/data 146,627.49 2.46
/ssd 143.05 0.07

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2020年4月~2021年3月)


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JAXA(宇宙航空研究開発機構) 調布航空宇宙センター
所在地 〒182-8522 東京都
調布市深大寺東町7-44-1