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圧縮性熱乱流境界層の物理とモデリングに関する研究

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2020年4月~2021年3月)

報告書番号: R20JACA31

利用分野: JSS大学共同利用

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  • 責任者: 河合宗司, 東北大学大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻
  • 問い合せ先: ryo.hirai.q7@dc.tohoku.ac.jp(ryo.hirai.q7@dc.tohoku.ac.jp)
  • メンバ: 河合 宗司, 玉置 義治, 平井 遼

事業概要

本研究では, 加熱・冷却壁を伴う圧縮性乱流境界層において, 壁面近傍の乱流統計および乱流構造を調査する. 壁面温度によって生じる境界層内における局所レイノルズ数の変化が乱流物理に及ぼす影響を評価するために, レイノルズ数が境界層内で一定となる流体の数値実験を行い, 境界層内でレイノルズ数が変わる一般的な理想気体のケースと比較を行う.

参照URL

河合研究室 | 東北大学 大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻 空力設計学分野」参照.

JAXAスーパーコンピュータを使用する理由と利点

特に冷却壁条件において, 高レイノルズ数によって乱流境界層の壁面近傍における渦が微小化するため, 高忠実なLES計算を行うために高い計算コストがかかる. よって, JSS2などのスーパーコンピュータを用いた大規模並列計算が必要不可欠である.

今年度の成果

本研究では加熱・冷却壁を伴う乱流境界層に対してLES解析を行い,壁面熱流束を伴う乱流境界層現象における詳細な乱流物理の解明を目指している.局所レイノルズ数 Re_τ^* = √ρ √τ_w δ_99⁄μ_w が乱流統計に及ぼす影響を調査するために,粘性係数が密度の平方根に比例する (μ⁄μ_∞ = √ρ⁄ρ_∞) 流体を設定して境界層内の局所レイノルズ数が一定となる数値実験を実施し,従来の局所レイノルズ数が変化する理想気体のケースと比較する. LESの計算条件は以下のとおりである.主流条件はマッハ数が M_∞ = 2.28,レイノルズ数が理想気体のケースで Re_θ = 2,500,レイノルズ数が一定のケースで Re_θ = 1,300 とした (レイノルズ数の代表長さθは境界層の運動量厚さ).空間差分に6次精度コンパクト差分法,時間積分法に3段3次TVD Runge-Kutta法を用いた.壁面温度T_wは空力加熱を受けた壁面温度 (回復温度) をT_rとした時に T_w⁄T_r = 0.5,1.0,2.0 の全3ケースを計算した.T_w⁄T_r < 1.0 のときに冷却条件,T_w⁄T_r > 1.0 のときに加熱条件,T_w⁄T_r = 1.0 のときに擬似断熱条件となる.

図1に y^*≈15高さ断面における瞬時の主流方向速度変動を内層長さスケールで示す (l^*=√ρ √τ_w l/μ は準局所長さスケール).理想気体(左列)の場合,疑似断熱壁(図1a)と比較して加熱壁(図1c)ではより小さい乱流スケールが観察され,逆に冷却壁(図1e)ではより大きな乱流スケールが見られる.一方で,レイノルズ数一定の場合,疑似断熱壁,加熱壁,冷却壁の間に乱流スケールの違いがほとんど見られないことがわかる(それぞれ図1b, 図1d, 図1f).図1の結果から,壁面温度の違いによって発生した乱流構造の変化には流体温度や密度などの熱力学変数そのものが影響しているのではなく,局所レイノルズ数の変化が大きく寄与していることが示唆された.

図2に壁面近傍秩序乱流構造の条件付き平均流れ場における (a) 主流方向速度変動, (b) 平均速度,および (c,d) 平均速度の壁面垂直方向微分量の分布を示す.(a)の速度変動は図1で示された乱流構造に対応しており,理想気体においては冷却壁でより大きな速度変動,加熱壁でより小さな速度変動が生じている.また,レイノルズ数一定のケースにおいては理想気体のケースに比べて壁面温度による速度変動への影響が小さい.このような速度変動分布における特徴は(b)の平均速度分布,および(c)の1階微分の分布においても同様に観察される.さらに,(d)の2階微分の分布において速度変動のピークが生じるy^*≈15と同じ高さで変曲点が現れることが観察された.これらの図2の結果は,乱流構造を表す速度変動成分と時間平均された速度の間に密接な相関関係があることを示唆している.さらに,一定の局所レイノルズ数によるスケーリング効果も図1と同様に観察された.以上の結果から,局所レイノルズ数が熱乱流境界層の乱流統計および乱流構造における重要なスケーリングパラメータであることが示唆された.

Annual Reoprt Figures for 2020

図1: y^*≈15 の高さ断面における瞬時の主流方向速度変動. 左列, 理想気体のケース; 右列, レイノルズ数一定のケース. (a, b) 疑似断熱条件, (c, d) 加熱条件, (e, f) 冷却条件.

 

Annual Reoprt Figures for 2020

図2: 条件付き平均操作によって抽出した壁面近傍乱流構造の壁面垂直方向分布. (a)速度変動, (b)平均速度, (c)平均速度の壁面垂直方向一階微分, (d) 平均速度の壁面垂直方向二階微分. 実線, 理想気体のケース; 破線, レイノルズ数一定のケース. 黒線, 疑似断熱壁; 赤線, 加熱壁; 青線, 冷却壁.

 

成果の公表

-査読付き論文

R. Hirai, R. Pecnik, S. Kawai, "Semi-local Reynolds number's effects in scaling turbulent statistics for wall heated/cooled supersonic turbulent boundary layers", Physical Review Fluids (提出準備中)

-口頭発表

平井遼, Rene Pecnik, 河合宗司:加熱/冷却壁を伴う乱流境界層現象における無次元支配パラメータ, 第34回数値流体力学シンポジウム

JSS利用状況

計算情報

  • プロセス並列手法: MPI
  • スレッド並列手法: OpenMP
  • プロセス並列数: 1020 - 1760
  • 1ケースあたりの経過時間: 120 時間

JSS2利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.11

 

内訳

JSS2のシステム構成や主要な仕様は、JSS2のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
SORA-MA 623,377.95 0.12
SORA-PP 0.00 0.00
SORA-LM 0.00 0.00
SORA-TPP 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 290.15 0.27
/data 13,029.51 0.25
/ltmp 2,781.72 0.24
アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

 

JSS3利用量

 

総資源に占める利用割合※1(%): 0.01

 

内訳

JSS3のシステム構成や主要な仕様は、JSS3のシステム構成をご覧下さい。

計算資源
計算システム名 コア時間(コア・h) 資源の利用割合※2(%)
TOKI-SORA 0.00 0.00
TOKI-RURI 0.00 0.00
TOKI-TRURI 0.00 0.00

 

ファイルシステム資源
ファイルシステム名 ストレージ割当量(GiB) 資源の利用割合※2(%)
/home 287.16 0.20
/data 9,776.23 0.16
/ssd 105.96 0.06

 

アーカイバ資源
アーカイバシステム名 利用量(TiB) 資源の利用割合※2(%)
J-SPACE 0.00 0.00

※1 総資源に占める利用割合:3つの資源(計算, ファイルシステム, アーカイバ)の利用割合の加重平均.

※2 資源の利用割合:対象資源一年間の総利用量に対する利用割合.

JAXAスーパーコンピュータシステム利用成果報告(2020年4月~2021年3月)


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